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【第五話】大人になれない、大人たち|その怒りは、誰のもの?他者攻撃が生まれる心理

深夜1時、自分の部屋にて
スマホを眺めている明日香。


画面に映るのは、
悠斗の彼女のSNS。


「どんな女性なんだろう?」
最初は、ただの好奇心だった。


しかし気づけば、


明日香の思いは、
単なる好奇心では
済まなくなっていくのでした。

選ばれなかった、その後のふたり

SNSを見ながら、欠点探しへ



明日香は、思わず呟いてしまいます。

「でも、この子ってさ...結構加工してない?」
「男の人の前だと、ちょっと態度違うし。」

「こういう子って、男ウケいいんだろうな。」
「私は、そういうことしたくないけど。」


悠人の彼女の人物像が、少しずつ掴めてきたようです。



しかし、不思議なことが1つ。


明日香が探してるのは、
彼女の魅力的な部分ではなく、
欠点ばかりのようです。

明日香の中で生まれた「理由」

翌日、会社の昼休憩中のこと。
七海と明日香は談笑しています。

「なんかさ、〇〇ちゃんって男の人の前だと結構違うよね」
「私、ああいうの苦手なんだよね」
「まあ、男の人はそういうのが好きなんだと思うけど」


七海は相槌を打ちながら、
静かに話を聞いています。

明日香の主張

さらに、明日香は続けます。

「私も、こんなふうにもっと男ウケするように振る舞えばよかったのかな?」
「でも、そういうの好きじゃないんだよね」
「そこまでして選ばれなくてもいいかも」



"どうして私じゃなかったんだろう"
という疑問は、いつのまにか、


「私はああいう振る舞いをしなかったから、選ばれなかった」
という結論に落ち着いていました。


しかし、悠斗が彼女を選んだ理由は、誰も知らない。


肝心の部分は不明のままです。


なんだか、
明日香自身が納得できる理由を、
作り始めているようでした。

七海には、何が見えてる?

一方、七海は明日香の話を聞きながら
考えを巡らせているようです。

「まあ、そういう面もあるのかもね...」
「でも、悠斗が何を好きで付き合ったのかは、本人にしか分からないよね」


明日香は、どこか納得のいかない表情をしています。

七海にも、身に覚えのある感情

七海は、ふと思い出します。


好きな男性に彼女ができたとき、
「なんか面白くないな」
と感じていたことを。


別にあの子には何もされてない。
けど、あの子の嫌なところ探してた。

明日香との話から、内省が広がっていく七海

客観的に見ると、こんな感じだったのか。




自分が渦中にいると気づけないけど、
起こってることは、案外シンプルなんだ。


七海は、さらに考えます。


ココがポイント

『私が嫌だったのは、あの子なのかな?』
『それとも、選ばれなかったことなのかな?』

【ねぐちの疑問】「本当に、それは相手の問題?」

では、ここからはナビゲーターこと僕"ねぐち”が解説していきます。まず、僕が気になること。


ねぐちの疑問

明日香は、悠斗の彼女について
いろんな思いを巡らせている様子。


でも、僕は不思議です。


その彼女は、明日香に何かしたのでしょうか?


今のところ、分かっているのは
悠斗と付き合い始めたことだけ。


それなのに、どうして明日香は
あの子の欠点を探し始めたのでしょう。

【心理解説】自分の価値を守るための防衛

明日香自身は、自分が悠斗に選ばれると思っていました。


しかし、実際には選ばれなかった。


この結果は、明日香が抱いていた自己像と食い違ってしまいます。

  • 私は、結構魅力がある
  • 悠斗も私に好意があると思っていた
  • だから、彼女は私のはずだったのに


自分の予想が外れた時、
人は不快な気持ちになることがあります。

自分の見積もりが違ったのかもしれない
と考える代わりに、


「相手が特別なことをしたから、結果がおかしくなった」
「相手がズルをしたから、こうなった」


そんな説明を作ることで、
不快感を消そうとすることがあります。


ココがポイント

これまで抱いていた自己像も大きく修正する必要がない。


必ず、この反応が起きるわけではありません。


ただ、ときどきこうやって
自分の心を守るために働く心理がある。

他人の価値を下げると、自分の価値が上がる?

さらに、自己防衛だけでなく、
他者攻撃へと進んでいくことも。


今回の明日香には、その傾向が出ています。


受け入れることができなかった結果の原因を、

  • あの子は男ウケを狙っているから
  • あの子は媚びているから
  • あの子はズルをして選ばれた

そんな予想を立てることで、
さらに自己防衛を強めることも。


この予想は本当かもしれないし、
そうじゃないかもしれない。


しかし、どちらだとしても。


それが、あの子を攻撃していい理由になるわけではありません。

ココがポイント

誰かのせいにしたところで、結果が変わることはない。

相手を下げても、結果は何も変わらないという真実

厳しいことを言いますが、
どれだけ相手の女性の評価を下げたとしても、
結果は変わりません。


自分に問題があったからではなく、
相手の選ばれ方に問題があった。
と思えると、一時的には楽かもしれない。


ただ、僕は思います。

他人の価値を下げることと、
自分の価値を高めることは、
まったく別の話なのでは?

他者攻撃の自覚がない明日香

ある日、明日香は友人Bとランチを楽しんでいます。

「〇〇ちゃんって、男の人の前だとけっこう態度違うんだよね」
「えっ、そうなの?」
「うん、まあ上手いんじゃない?」

友人Bは、その女性に会ったことがありません。


それでも、明日香の話を聞いて、
なんとなく彼女の人物像が
出来上がってしまったようです。

本人は、攻撃してる自覚がない

明日香に、嘘をついている感覚はありません。
事実を言っている。


なぜなら、彼女には
本当にそう見えているから。

友人Bに、
「明日香って、その子のことあんま好きじゃないもんね」
と言われても


「えっ?別に嫌いじゃないよ?」
と驚いた顔で答えます。


「だって、本当に態度が違うんだもん」
「私が嫌いだから言ってるわけじゃないし」


本人は、他人を攻撃してる認識がまるでありません。
自分の感情を、客観的な評価だと認識してるのです。



当の本人は「攻撃してる自覚がない」というのが痛烈なポイントです。

本当にそう見えてるから、そうでしかない

自分の主観を「事実」だと思い込んでいると、


悪気なく、無自覚のうちに
誰かを攻撃をしてしまうことがあるんです。


ただ、これを自覚して改善するのはとても難しいこと。


自分を疑う姿勢を、持つ必要があります。

自分を疑うことの難しさ

しかし、自分を疑う姿勢を持つのは、
人間の心理的な傾向から考えても、
なかなか難しいこと。


今の自分を否定されるかもしれない。
自分の間違いを認める必要があるかも...


いろんな精神的負担の先で、自分を疑うことができます。
だから、気力も使うし、頭も使う。


やはり、難しいことです。


だから、第五話の明日香のように、
悠斗でもなく、自分でもなく、
「彼女」の問題にしてしまいたくなる。


相手のことを、よく知らない。


だからこそ、自分の想像で
相手の人物像を作ってしまうこともある。


そして、その想像に向かって
矢印を向けてしまう。


そんな側面もあるのかもしれません。

自分の感情に気づく、二人の違い

明日香は、気づける機会は得ているんです。


「これって...」と内省を深めるチャンスは出来事としてある。


一方、七海は「自分にもそんなところがあったな」と自分を振り返る時間をもつ。


選ばれなかったこと自体が悪いのではないように思います。
生きていればそういうことはある。


選ばれなかったを素直に認めること、受け止めること。


それが、他人に向けたくなる矢印を、
自分へ戻すきっかけとなる。


適度な自責って、大事なんですよ。


成長する上で、避けて通れない過程だと僕は考えています。

感情と行動の区別をするには

嫉妬することと、攻撃することは違う。

嫉妬は「感情」
自然に湧くもの。


悔しい
羨ましい。
自分も選ばれたかった。


嫉妬という感情が湧くこと自体は、誰かへの攻撃ではありません。


感情が湧くことと、
その感情をどう扱うかは別問題。


自分の中に生まれた不快な感情を理由に、
相手の人格や魅力を不当に低く評価したり、
根拠のない話を広めたりするようになると、


それは単なる感情ではなく

「他人への攻撃」となってしまいます。

相手の問題にしてる間、自分は変わらなくて済むから

自分の痛みを、他人の問題として扱えると、
自分について考える機会が失われてしまう。

  • 自分の現在地を見ること
  • 自分の範囲の問題を引き受けること
  • 望まない結果を受け止めること

七海は、何度も問いかけました。


自分はどうだったんだろう?と。
彼女のせいにしなかったんです。


だって、知らない人だから。
考えたって、あの子のことは分からないから。

最後の問いかけ

誰かを羨ましいと思うこと
自分が欲しかったものを別の誰かが手に入れたこと


そんな痛みを伴う経験は
誰にでも一度はあるものです。


そんな時、相手の欠点が
妙に気になったことはありませんか?


相手に問題があったから気になったのか?


それとも、
あの子が手に入れたからでしょうか?


あの子が持ってるものが、
私も欲しかっただけなのかもしれない。




本当に、それは相手の問題ですか?

  • この記事を書いた人

ねぐち

ついつい人の悩みや選択の背景にある「構造」を考えてしまう鳥です。 感情と論理、どちらも踏まえた上で、納得できる理解を大切にしています。 「理解すること」が人生を楽にしていく流れを、ここで記録中。

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